何より偽り、嘘を禁ずる村の片隅に住む善治とその老母、清。雪中に倒れていた女、たづ。村の男嘉六。緒方美穂さんによるなんともいえない歌で始まるこの舞台、もとは『鶴の恩返し』しかし綺麗事でなくなまなましい人の欲がうずまいていて。
と、最近読んだ本で言えば『闇窓』『人食い観音』の篠たまきさんの世界に近いものが。
ほとんどの舞台はその善治の家の中。お寺の暗い本堂で行われる劇は観客を雪に閉ざされた村外れの古い家の中に引っ張っていって、もちろん誰も救われない事態に進行していくのであります。
主演、演出、主催の茶風林さんや清ばあの真山亜子さんとはお仕事したことありますが、『怪かし会』でずっと出演されてた伊東美紀さん、今回ダブルキャストの恒松あゆみさん、演出助手も務める鶴岡聡さんとはずっと聞くばかりだったのに、今年はプリキュアや鬼太郎でお仕事することもできました。そうしてから聞く朗読はまた味わい深いものが。それにしても皆さんすごい迫力。『怪かし会』とちがい一つの長い劇を、人数絞っての上演で、演じる人達の力がまた更に遺憾なく発揮されていたのでした。
そ言う言う緊迫した劇の中間に、お楽しみタイム。これも『怪かし会』と同じ流れ。
特製おつまみ弁当と、新潟の酒蔵からの日本酒。いつもは枡がつくところ今回はワイングラス。
なんと、ワイン酵母で作られた日本酒なのです。
これが美味い!うっかり飲みすぎないようにするのが大変。
おつまみもどれも美味しゅうございました。
普通に考えると緊張感が切れてしまうのではというところですが、続けて聞くと客の方も疲れ切ってしまうのでこれはちょうどいいのだなあと。
今回の演目は茶風林さんが三十年前に見て衝撃を受け、やっと今になって自分で上演できるようになったものとのこと。それに匹敵する戯曲探すのは大変だろうけど、これはまた続けてほしいですね。
新耳袋トークライブほか怪談イベントでよくご一緒する渡辺シヴヲさん出演の舞台にまた行きました。前見たのが面白かったのですよ。たまたまいけるが平日夕方。でもぎっしり満席。
今回は写真館が舞台、とおもいきや喫茶店。そこから舞台動かず。マスター親子含め色んな人が出入りして、あれよあれよという間にややこしい人間関係と勘違いとすれ違いで大変なことに。説明しようとすると複雑すぎるのを見事な裁きでみせて、そのすれ違い勘違いから生まれた笑いが増幅していくという、もう手練な構成。もちろん役者さんたちも見事。そしてタイトルのこともきちんと回収してあれだけ笑わせたのに泣きそうな大団円に。シヴヲさん、ちょっとだけ変な場面もあるけど結構まともな役だったなあ。また次の公演も楽しみなりました。
作・演出:じんのひろあき
石川ひとみ & 江幡朋子
怪談仲間の女優石川ひとみさんからお案内いただき見てきました。
二人座りまず石川さんが語り始め、のっけから怪しい人全開。
作家へのファンレターなのだけど、その小説のモデルは自分ですね、という内容が分かる前からもうこの人あかん人。
もうひとりの江幡さんがその小説家。主に編集者あてのメール文面。明るく振る舞ってるけど、ストーカー女に追い詰められていくのが予想より早く展開。
作演出のじんのさんも交えてのアフタートーク、ラブレターズという朗読劇にインスパイアされて、もとは90年台に書かれたものだそうで。それで原稿送るのにFAXつかったりなんですね。今かかれると大筋変わらなくてももっと違う展開もあるのかも。ある種古典的なとも言える戯曲に対して二人の演じ方を楽しむのが良さそうで、演じる人によってかなり違うものになりそうで。江幡さんは初演の人とかなり近い声なのだそうです。明るめキャピキャピに演じられることもあるストーカー女、今回ののっけからおかしい人バージョンでは声量の低い限界をやってみたということでしたが、小さい小屋でかなり効果的。色んな人の別バージョンも見てみたくなりますね。
『トランスフォーマー ギャラクシーフォース』で一年仕事ご一緒した森永理科さんが月蝕歌劇団の人というのは当時から知ってたんですが、なかなか行く機会がなく。そのままかなりの年月が。
近年行くようになった劇団廻天百眼、そこの紅日毬子さんが客演されることもあるというのも知ってたのでどこかで行かねばと思っていたところにこの公演。紅日さんはダブルキャストらしいし、森永さんは演出助手ということなので出演はないのかなあと思ってたら最終日は二人の共演というのでこの期を逃しては!と行ってきました。新宿二丁目ど真ん中の地下にこんな劇場があったんですね。
幕開きから紅日さんの出番。本筋の主人公と出会い、舞台は学園へ。そこからもう怒涛な展開。学園の女子生徒たちが少女漫画家から名前取られてたり、剣やマシンガンで戦ったり。このお芝居のタイトルには覚えがあったのですが、後で調べたらもとは80年代と古いのですね。なんとOVAにもなったこともある。ある種の中二病的世界の魁のようでもあるし、もう古典では。もちろん歌もあり、この世界の中でも宝塚というのが憧れとしてあるのが不思議なかんじも。
少女たちが武器を手に戦うという要素自体は現在もアニメはじめいろんなとこで見ますが、そこに革命が、あるいは神殺しが絡むのは今の造り手には殆ど見られないものなのでは。ちゃんと全部把握してるわけではないけど、山田正紀、押井守くらいで元の作者高取英さんと同年代の人たちに共通するものなのかなあ。
話がずんずん進んでいくけど森永さんはどこで?と思ったらもうラスボス。時空飛んで天草四郎。特に凄んだり妖しくするでなくむしろ可愛いくらいの声ででてきて、しかしながら怖く格好いいというとんでもない役。紅日さんとすごくつながる役だったのは個人的に嬉しいポイント。
もちろん主演の少女たちはどの場面でも頑張ってるし、マッチ、炎、懐中電灯をつかった特殊照明も楽しい。森永さんや紅日さんの出演あってもなくても次回からの公演も行くようにしなければ。
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